[PR]
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
兄弟たちのお話2
お兄ちゃんとお出かけ編です
+++++
お出かけ
朝早くに姉がちびを担いでいった。
さあちびーお姉ちゃんとデートよーと高笑いでもするかのように出て行った。
はっと気づいたのは、数分後。
久しぶりの休日だというのに、相変わらず弟の世話があるからとダチの誘いは全て断ってしまっていた。
ねえちゃん、せめて、前もって!自前に!予定を伝えておいてくれればいいだろうに・・・。
まあ姉ちゃんのことだから、朝起きて突発的に思いついたんだろうな。
さて、今日一日ぽっかりと開いてしまった。
最近はちびの世話に追われて自分の時間なんて持てなかったし、久しぶりにのんびりしているかな・・・・
ってなんだ俺は疲れた新米主婦か、なんか悲しくなってくるわ・・
姉は朝食も摂らずに出かけていってしまった、久しぶりの一人だ。
がっつり手抜きしてもいいだろう。
冷蔵庫の残り物でも漁って見るか、とひんやりした中に頭を突っ込んで冷蔵庫を覗き込んでいると、廊下のほうでぎしり、と階段の軋む音がする。重量のあるその音は廊下を突っ切り、キッチンのほうへ近づいてくる。
「・・・・。」
「・・・・。ハヨ、」
目だけをキッチンの入り口に向けると、置き抜けのだらしない格好をした兄貴が腹をぼりぼり掻きながらこっちを見ていた。
未だ頭が覚醒しきっていないんだろう、ぼんやりとしていて、なのに目つきがいつもの三倍は鋭い。
こえーよ、その顔でちびの前に出ると嫌われるぞ。
「ちびは?」
いつも俺と同じ時間に目を覚ましてちょろちょろしている姿が見つからないからか、俺の周りをきょろきょろ見やっている。
「姉ちゃんが連れて行った」
「てことは、」
「朝メシ無し」
「・・・・・。」
無言の兄貴は放って置いて、とりあえずレタスと奥から見つけたハムでサラダを作ることにする。
ちなみにちぎって皿に入れるだけだ。
お手軽ってすてき。
ついでにトースターにパンを二枚入れる。
「今日、暇なのか」
幾分ましな顔つきになった兄貴が、俺の正面でパンを齧りながら聞いて来た。
「久しぶりの自由だし、家でごろごろしてるわ」
「なら付き合え」
「は?」
「じゃあ駅前に集合な、時間は10時」
「は?どういう、って別に同じ家なんだからわざわざ外で待ち合わせしなくても・・」
いーじゃん、と言う頃には兄貴は最後の一口を食べ、もぐもぐしながらキッチンを出て行った。
って、最後まで聞いてけよ、しかも俺の返事は無視か。
結局、暇だし、メシでも奢ってもらおうと付き合うことにしたのだが。
「兄貴、ゴメン、俺意味がわからない」
待ち合わせ、公園通って、映画ときてこ洒落たカフェレストラン。しかも予約席だった。
パスタが美味しい!お洒落なランチスポット、とか雑誌の特集に載っていたのを知っている。それを兄貴が読んでいたのも知っている。そしてここがデートスポットなのも知っている。
男女のカップルで占められる店内、男同士のテーブルはやけに悪目立ちする。
いや、俺の考えすぎか、いやいや・・・・
これで女の子同士なら、お友達とお洒落なお店でランチですか、いいですね優雅ですね、で終わるのに。
なんで兄貴と二人で・・・。
「兄貴、フツーはさあ、弟とこんな店に入るのって」
「元々はお前と来るはずじゃなかったんだ」
「ああ、ふられたのか。ドンマイおにーちゃん」
「ちげーよ」
だからってなんでデートコースしっかり回るのかね。
俺はひじを突いて頬杖し、カルボナーラをくるくるしながらため息を吐いた。
兄貴がたしなめるような目でこっちを見てきたが、無視をする。
兄弟間でマナーとかそんなの関係ないから。
いや、あるだろ、と兄貴が心の中でつっこんだかどうかは定かではない。
その後、だらだら歩きながら肩を並べて帰宅すると、すでに姉ちゃんとちびが家に帰った後だったらしい。
「お昼一緒に食べようと思ったんだけどあんた達携帯切ってるんだもん」
あ、っと兄貴と一緒に呟いて携帯を見ると画面は真っ暗。
そういえば映画館で電源切って忘れていた。
ダメ兄弟、と言う目で姉ちゃんが俺たちを睨む。
「で、あそこのパスタ、美味しかった?」
「あー、上手かったたまにはあーゆーのもいいかな・・、ってなんで知ってんの」
「店に入るところ見たもの」
ねーちびー?と姉ちゃんがちびを見るとちびも「ねー」と頷く。
「まったく自分達ばっかいいもん食べてきちゃってさあ、今度あたしにも奢りなさいよ?」
と、後ろのほうは兄貴を見ながら言っているのを見てほっとする。あんな店俺払えないし。
「なんでお前に奢んなくちゃいけないんだよ」
「あら、妹のお願いは聞いてくれないわけ?」
ひいきはんたーい、と姉ちゃんが沸く。
じゃあ、ワリカンな、
それじゃあ意味無いじゃないのよ
そんな会話を繰り広げる二人を背に、おれはちびの頭を撫でた。
学校以外でこんなにちびと離れていたのは久しぶりだった、寂しいとは行かなくても物足りなさを感じていたようだ。
ちびはさっきまでは姉ちゃんに買ってもらったらしいおもちゃを手にとたとた走り回っていたというのに、俺の手で撫でられたらとろりとした顔つきになって俺に体重をかけてきた。
昼寝、しなかったっぽいし疲れたんだな。
ちびの頭がぐらぐらしだして、どうやら船を漕ぎだしてるっぽい。そのまま夢の中へどぼんだろう。
苦笑いしながらちびを抱き上げると腕がだらんとさがった。これはもう本格的に寝入ってしまった。しかしおもちゃは手放さない。
よっぽど嬉しかったんだな。
いまだ止まぬ二人の喧騒。
俺はちびを自分の部屋のベッドに起こさないようにそっと下ろしてやってタオルケットを体にかける。
そのまま離れないで床に座り込み、頭をぼすんとベッドに置く。
そういえば、ちびと離れていることも珍しいことだが、それ以上に兄貴と外へ出かけるというのも久しぶりのことだったな、と俺はちびの寝顔を見つめながら一日を振り返っていた。
ちびの寝顔を眺めているとこっちまで寝入ってしまいそうだ。
瞼が、重く。
いつの間にか寝入った俺に、兄貴と姉ちゃんが二人で苦笑いしながらタオルケットをかけてくれたことを、俺は知らない。
end
COMMENT
COMMENT FORM
TRACKBACK
09 | 2024/10 | 11 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ||
6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 |
20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 |
27 | 28 | 29 | 30 | 31 |